この特性表の赤線は下のネットワークを通した時の周波数特性です。 このネットワークの特徴は、6dB/oct.のフィルターで、クロスオーバー周波数より かなり高い周波数からローカットし、ドライバーの能率がウーファーの能率より高い 周波数帯だけを下げ、相対的に能率が低くなる高音域にかけては減衰量を減らし ドライバーの能力を最大限まで活用しようというコンセプトにあります。 クロスオーバー周波数はユニット自体の持つ低音域特性やウーファーとの能率差 によって決定されてしまうため、設計の自由度は制限されますが、直列にはコン デンサーがたった1個挿入されるだけという究極のシンプルさから生まれる音の 粒だちが、それらのハードルを乗り越えてでも採用しようという気持ちにさせてくれ ます。アッテネーターも不要で、しかも高音域にかけてのロールオフを補正する ホーン・イコライザー機能まで持たせられるというのは、「シンプル・イズ・ベスト」 そのものです。 さらに、ここで注目していただきたいのは、ネットワーク無しの場合と比較して 8kHz以上の能率が上がっていることです。これは直列に入っているコンデンサー によって引き起こされる位相シフトが、ドライバー自体が持つ位相シフトとは逆の 方向に作用し、トータルでは位相のシフトが少なくなることによって起きる現象 です。この帯域に対しては、カットする働きしか持たないはずのフィルターが、 わずか2dB程度とはいえ、逆にブーストしているということですので、この回路は 「一石二鳥」かもしれません。 もちろん、シャント型フィルターを更に付け足すことによって、よりフラットな特性に なるように調整することも可能です。 |
6dB/oct.のフィルターは理論的にも優れた位相特性をもっているため、同軸型スピーカのメリットを充分活かせ、空間合成された波形の乱れも最小に抑えられています。アッテネーターによる音質の劣化は予想以上のものがあり、直列に抵抗が入ってしまうタイプは当然ですが、高価なコイルタップ式でもコイルのL成分が高音域には特に有害です。このアッテネーターを省略できる上、コンデンサーが小容量で済むことから、より高品位なパーツの採用が可能になり、より良い音質が得られるようになっています。 |
上の特性表はRADIANの2216ウーファーと組み合わせたシステムの周波数特性 です。残念なことに、2台中の1台のドライバー(特性表下)の磁力が弱くなっている ようで、良い方のドライバーに合わせて設計してしまうと、ますます差が付いてしまい ますので、できるだけ同じキャラクターになるように設定いたしました。 同軸型と違い、マイクの位置を少しでも上下させると周波数特性が変わってしまい、 リスニング・ポイントを決めていただかないと正確な調整は不可能ですが、位相を つなぐことを最優先にいたしましたので、頭を動かしても音像の乱れは最小に抑え られていると思います。位相重視と言っても、周波数特性の方も32Hzから15kHz まで10dB以内に収まっていますので、最新の2ウェイのシステムと比較しても、遜色 はありません。16kHz以上の落ち込みが激しいので20kHzのレスポンスは落ちて いますが、それでも下手なツィーターよりは伸びているくらいですので、位相の面から 見ても、むしろ好ましい特性かもしれません。 (赤線がホーンとウーファーの中間、緑線がホーンの音軸のほぼ中心の位置です。) このドライバーがこの世に出た頃は1インチのドライバーですら10kHz程度までしか 10dB以内に収められなかったくらいですから、ダイアフラムの製造技術の進歩が この傑作ドライバーを現代に甦らせた意義は大きいと思われます。 ピーキングやエッジの反射でやかましいだけの高音域を伸ばした最近のドライバーや 歪みっぽいツィーターを使うより、はるかに生っぽいサウンドを感じることができます。 |