ネットワーク

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前ページのネットワークは、ドライバーに対して直列接続されるのはコンデンサが1個だけという非常に単純な構造で、音質的にも優れていますが、ユニットの特性がストレートに出てしまい、フラットな特性が得にくいことがあります。



そのばらつきを少しでも抑えるために、シャント・フィルターを二重にし、よりフラットな特性を得られるようにしてのが、上記のネットワークです。
この回路の欠点としては、超高音域に向かってインピーダンスが下がるため、パラに何台もつなぐとパワーアンプに負担がかかるといった点があげられますが、ピュアーなサウンドは他の回路では得られないものがありますし、かなりシビアなイコライジングも可能ですので、スタジオ向きとも言えます。素子を4段以上重ね急峻なカットオフ特性にしたフィルターとは異質のスムーズなサウンドをご堪能下さい。



RADIANの324シリーズは、よりフラットな特性が得られるように上記のようなイコライジング回路を採用していますが、直列に入る素子が増えた分、エネルギー感が失われているような感じもいたします。







KOZY STUDIOのネットワークの基本的な回路図は上記のようになっており、ドライバーとパワーアンプの間には抵抗と小容量のコンデンサーが1個ずつ挟まっているだけという、ドライバーにとって音質を悪化させる要因を最小限に抑えています。この直列に入っている抵抗はアッテネーターとしての働きの他に、ドライバーのインピーダンスが高音域に向かって上昇するにつれて減衰量が減ることになるため、相対的にハイをブーストする働きも兼ねています。更にコンデンサーも6dB/oct.のハイパス・フィルターとしてだけではなく、同時にアッテネーターの役割も兼ねているため、周波数特性の微妙な調整も可能になっています。
ハイのフィルターに並列に入っているコイルはカットオフ以下の肩特性を調整するのが主な働きですので、全体としては結果的に6dB/oct.のフィルターと同じような特性的になっています。



6dB/oct.のフィルターは理論的にも優れた位相特性をもっているため、同軸型スピーカのメリットを充分活かせ、空間合成された波形の乱れも最小に抑えられています。
アッテネーターによる音質の劣化は予想以上のものがあり、高価なコイルタップ式でもコイルのL成分が高音域には特に有害です。
このアッテネーターを省略できる上、コンデンサーが小容量で済むことから、より高品位なパーツの採用が可能になり、より良い音質が得られるようになっています。
なにより、10kHzの能率が落ち始める超高音域までアッテネートしてしまうのは無駄ということになります。


スピーカー・システムの一部として設計されたチャンネル・ディバイダーには、高音域のロールオフをブーストしてフラットにするホーン・イコライザーが内蔵されているものがありますが、その場合も、位相シフトをより少なくする方向で位相がシフトされますので、それなりの結果は得られますが、回路に直列に挿入される素子の数はかなり増えてしまいますので、音質の劣化は否めません。
ネットワークよりマルチの方がピュアーな音がすると信じ込まれているオーディオ・マニアの方々も多いのですが、どんなに簡略化してもバッファーアンプが2〜3個は必要になり、直列にコンデンサーが最低でも2個以上入ってしまうチャンネルディバイダーやホーン・イコライザーと比べれば、コンデンサー1個による音質劣化の方が少ないように思われます。小容量のコンデンサーの方が特性が良いからという意見もありますが、大容量でも特性の良いフィルム・コンデンサーは入手可能ですし、価格もせいぜい数千円程度で納まりますので、製造原価だけでも二桁以上の差が付くと思います。

ちなみにイコライジングは嫌いだからと、スーパー・ツィーターを使うという方々もいらっしゃいますが、高い周波数ではユニット同士が数mmずれただけで位相がずれてしまいますので、位相をスムーズにつなげること自体、耳の位置をmm単位で固定しない限り物理的に不可能です。
*ちなみに音速は摂氏20度で秒速約340mですから、10kHzでは1波長が34mmです。
*17mmで逆相!
しかも、位相シフトは多くなることはあっても少なくなることはあり得ませんので、得策とは思えません。


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