ネットワークの真実

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オーディオマニアの方々に限らず、PAの仕事をされている、いわばプロの方々でも、
ネットワークに関して、大きな勘違いをされていらっしゃる方が多くいらっしゃるようです
ので、簡単に説明させていただきます。


上記の回路は一般的によく見られる12dB/oct.のネットワークのもので、コイル(L)と
コンデンサー(C)は、それぞれ
L = 225×インピーダンス÷クロス周波数
C = 113000÷インピーダンス÷クロス周波数
で簡単に、求められます。(バターワース)
このバターワース係数によるフィルターでは、理論上、クロス周波数で音圧が3dB盛り
上がってしまう問題があるとされていますが、実際にはそれ以上の問題が起きています。


これはRADIANの38cmウーファー2216に上記の計算で得られた800Hzのフィルター
を通した場合の特性です。赤線のオリジナルの周波数特性と比較していただければ、
緑線の方はしっかり12dB/oct.で落ちているように見えると思いますが、問題は、肝心の
周波数から落ちてくれずに、1.5kHzぐらいで、やっと3dB落ちているという点です。
ユニットの位相特性やインピーダンス特性や周波数特性を無視した計算式で得られる
約2.3mHのコイルと約23μFのコンデンサーでは、3dBの盛り上がりで済むはずはなく、
音が出ればいい程度のレベルでしかありません。


これはJames B. LansingがALTECで同軸型スピーカーの開発に携わっていた頃の
ネットワークですが、ローもハイも12オームで設計されており、ウーファーのインピー
ダンスに合わせるためにマッチング・トランスが使用されていました。
ハイのアッテネーターは減衰量によってインピーダンスが変化してしまう少々乱暴な
設計ですが、通常の減衰量付近で最適な負荷になるように設定されていたようで、
極端なレベル設定をしない限り、クロスオーバー周波数がずれてしまうような問題は
少なかったようです。
ただ、ウーファー側にマッチング・トランスを入れるというのは、あまり感心できない
設計です。


これはインピーダンス補正回路を付け足して、できるだけスピーカーユニットのインピーダンスを
定抵抗に近いフラットな特性にしようとしている3ウェイの回路図ですが、期待するほどの効果は
得られない上、位相の回転をより複雑にしてしまうため、並列に接続されているコンデンサーの
容量を単純に大きくしただけの方が良い結果が得られるくらいです。


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