エンジニア の 独り言

マルチ・アンプ Vs ネットワーク

大音量時には、ネットワークでは、直列に入るコイルやコンデンサーによって
ロスがおきたり、歪などが発生するのではと、お考えの方が、PAの現場で働
いていらっしゃる方々にも、オーディオマニアの方々にも、かなりいらっしゃる
ようです。

コイルの直流抵抗はよほどの安物でなければ、0.3オーム以下ですので、
8オームのスピーカーを鳴らす場合、入力されたパワーの96.39%以上が
スピーカーに伝わる計算になりますので、ロスは0.3dB以下になります。
少し前に測定した安物のスピーカーのコネクターの接触抵抗が0.38オーム
もありましたので、それよりはマシですし、多くの場合、スピーカーケーブル
によるロスの方が多いようです。
38cm同軸+38cmウーファーのシステムに採用したサブ・ウーファー用の
20mH/200Wの鉄心型コイルの直流抵抗は測定用の端子自体の接触抵抗
より低かったため、測定不能でした。(測定用の端子同士を押しつけても
コイルの両端に端子を押しつけても0.2オーム以下でした。)

歪みに関しても、鉄心型の場合でも130dB以下ですので、0.00003%以下で、
チャンネルディバイダーなどに使用されている半導体よりは低歪です。
ちなみに松下が作っている最高級の炭素皮膜抵抗の熱雑音でも150dB程度
のようですので、様々な半導体やコンデンサーや抵抗で構成されているアンプ
で0.001%以下の歪み率を実現するには、かなりの困難が伴いますが空芯型
コイルの場合は測定器の精度の限界以下ですので、異種金属接触による歪
と区別できるか疑問です。

チャンネル・ディバイダーで最も問題なのは、SN比が非常に悪いということです。
実測値で110dBというのが実情のようです。シーとノイズが聞こえたらSNが悪い
とお考え下さい。更に最近特に感じていることですが、半導体系のノイズは
高調波歪み成分が多く含まれているようで、非常に耳につく傾向があるようです。
ホーン・イコライザーなどで高音域をブーストする必要がある場合は、特にノイズ
が気になるようです。



上記のシステムは46cmウーファー+25cmミッド・ウーファー+ホーンを
250Hz/1.2kHzでクロスさせた24dB/oct.のマルチ・アンプ方式による
スピーカーシステムの特性です。200Hz付近のピークはフィルターの定数
がユニットとマッチしていないせいで、それぞれを単独で鳴らした場合は、
かなりきれいにクロスしているように見えてしまっていました。
ご本人はこれにツィーターを付け足して4ウェイにされる予定だったようで
何種類か試されたようでしたが、結局どれも気に入らなかったそうです。
多分、すさまじいピーク/ディップが生じていたのではないかと思われます。
このぐらいの特性ですと、ツィーターを付け足すよりは、ホーン用のイコライ
ジングをして、高音域をよりフラットにしたほうが、位相の乱れも少なく、良い
結果が得られるはずです。ユニットそれぞれの性能はまずまずでしたので
あとはフィルターをどのように設定するかだけにかかっていたわけです。
デジタル・チャンネル・ディバイダーですと、定数を自由に変えられる物も
ありますが、測定器が必ず必要になりますし、音質的にも、アナログの方が
良かったりするケースがほとんどですので、使用するスピーカー・ユニット
専用に設計されたネットワークの方が良い結果が得られるように思います。

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