左側がEC600のダイアフラムです。 右側はM4のダイアフラムですが、 両者には大きな差があります。 |
EC600の方は6インチという巨大なボイスコイルを採用して、オーディオ再生用 として、ごく普通の設計になっていましたが、M4の方はウーファーのコーン紙の ようなデザインで、ボイスコイルも4.5インチであり、しかもプラスティックの振動板を アルミ箔で挟んで強度を上げたような構造になっていました。当然、質量も大きく 周波数特性や音質に問題がありました。 |
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EC600 | M4 |
この周波数特性は、どちらも取り付けるホーンの特性の影響を受けないように、 ドライバーのスロート径と同じ太さのパイプをスロート部分に取り付けて測定した パワーレスポンス特性です。 EC600がまともなドライバーの特性をしているのに対して、M4の方はフェイズ・ プラグや振動板の問題から、ピークやディップの多い特性になっています。 私はEC600を購入する前はM4を自宅のリスニングルームで使っていましたので EC600のサウンドを聴いた瞬間、EC600の優位性を感じ、全てのスピーカーを EMILARに交換し、同時にEMILARの社長だったアルギス・レンカス氏からの EMILARの輸入代理店になってみないかという申し出を受け入れることを決意 しました。 そして、宣伝のため、EC600とM4を某オーディオ雑誌に貸し出したのですが、 評論家の連中はこともあろうに、EC600の方に「振動板が分割振動している。」 とか「エッジに問題があるのでは?」とか「バック・キャビティーに吸音材が入って いないから反射して残響が残るのでは?」といったような全くトンチンカンな批評 をしていました。 もしエッジが共振しているのなら、インピーダンス特性に何らかの乱れが現れる はずですし、振動板が分割振動を起こしているのなら、位相の乱れによって音が 打ち消し合うため音圧が下がり、ディップの多い周波数特性になるはずですが、 全てのデータは評論家の言っていることが全く逆であることを証明していました。 |
これが某オーディオ・メーカーで測定されたデータですが、私はこれ以来、 測定器すら持っていないオーディオ評論家の言うことは信用できないと思う ようになりました。 しかし、実際に振動板が分割振動を起こしていて、パルス応答にも問題のある ドライバーの方を音が良いと感じてしまうオーディオ評論家の耳はどのような構造 になっているのか、医学的にも音響心理学的にもチェックしてみたい気持ちも あります。 なにぶん、 「私はPhonoイコライザーがRIAAカーブから0.2dBずれていても判る。」
と宣っていた評論家が記事を書いていた雑誌ですので、推して知るべしなのかもしれません。 バック・キャップ内部に吸音材が入っていないのは、[ドライバー]の[構造]にも 書きましたが、必要ないから入れてないだけです。 バック・キャビティー内部は150dB以上という高音圧になり、この部分にフェルト のような吸音率の低い物を入れても吸音効果は期待できません。 フェルトの本当の働きはバックキャップが振動するのを若干抑える程度で、音の ほとんどは個体伝送によってドライバー全体に伝わってしまいます。 EC600の場合、バックキャップ自体の剛性を高め、振動が直ぐドライバー本体 →ホーン→エンクロージャーと伝わり、摩擦熱に変換されて減衰するように設計 されていますので、半世紀以上前に設計されたドライバーとは設計思想から 異なっていました。 ちなみにRenkus-Heinzから販売されていた大型ドライバーのSSD5600は Renkus氏が試作したユニットを元に製作された物ですが、本人はあくまで 試作品と主張しておりました。 |