MJ 無線と実験
1993年11月号

タイのミュージックシーン
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タイのライブスポット

ライブ、DJ、レーザーショーもある NASA
タイのレコーディングスタジオを取材した以上、タイの音楽市場がどのように
なているか知らずに帰ることはないと思い、早速ディスコ、コンサートホール、
レコード店などで調査を開始した。

まずは、ガイドブックなどで有名なナサ・スペースドローム(NASA Spacea-
drome)というディスコから始めることにする。(現地の人は「ナァサァ・スぺシ
ドローム」と発音する。)場所はペッブリー・ダットマイ通りをラーム・カムヘン
通りへ左折してすぐ左である。前は結構広い駐車場になっており、夜もふけ
るにしたがって、BMWやべんつで乗り付ける連中でごったがえすのである。

タイで有名なディスコは日本とは違い、ほとんどがステージを持ち、毎晩
ライブ・コンサートが開かれているのである。もちろん有名なミュージシャン達
は金、土曜日に集中しているが、DJとライブバンドが交互に客をわかせ、
次第にクライマックスへと向かっていく。このNASAは3,000人も収容できる
広さで、ダンス・フロアーとテーブル席に別れており、客はそれぞれ思い思い
の場所でダンスをしたり、ライブ演奏を楽しんだりしている。

ここの音響は Mahajak Development という会社が担当しており、責任者は
スッティサクさん、スピーカーシステムはJBLのユニットを使用した彼らの
オリジナルである。

ステージの左右にはJBLの46cmウーファーが12発ずつW型フォールデッド
ホーン・エンクロージャーに収められて使用されていた。ステージ下の右側
にはパワーアンプがあり、20台以上のアンプがラックにマウントされていたの
だが、この部屋へ入ってビックリしてしまった。なんと、この部屋全体が冷蔵庫
のように冷却されており、パワーアンプをオーバーヒートから守っているので
ある。パワーアンプのピークインジケーターはほぼ点灯しっぱなしの状態なの
で、タイのように暑い国ではこのような配慮も必要となってくるようだ。

メインスピーカーシステムはステージのフロントの真上に左右4台ずつフライ
ングされており、さらにテーブル席に向けて補助用の中規模なスピーカー・
システムが左右に3台ずつフライングされていた。当然この補助システムには
デジタル・ディレイがかかっており、メインシステムの音と調和するように設定
れていた。

さて肝心の音質についてだが、20〜30Hz付近の音圧はあまり感じられない
ものの、サウンド的にはごく標準的と言って良く、日本のディスコやコンサート
ホールで、ここより良いと言い切れる所は果たしてどのくらいあるだろうかと思
えるほどである。

またこのディスコでは他にない特別なショーが毎晩行われる。それは巨大な
UFOが登場するスペースショーだ。真夜中になるとレザーが飛び交い異次元
の世界が出現する。これはぜひ実物を見て一種の感動を味わっていただき
たいので、あえてここではその写真を掲載することを控えたい。見たければ
バンコクへ行くべし。
(ただし、実際に見て「なんだこんなもの」と思われても筆者は責任をとりま
せんので念のため)