サブ・ウーファーの効果的な使い方

よくサブウーファーには何がお薦めですかと聞かれることが多いのですが、ほとんどの方々は
大きめのエンクロージャーに46cmクラスの重いコーン紙のウーファーを2台入れたシステムを
念頭に置かれているようです。
確かに、大型のエンクロージャーですと余裕で低音を再生することが可能ですが、一カ所の
会場で使用するサブ・ウーファー・システムの容積の合計が同じ場合、38cmのウーファーの
方が、低音を再生するには有利です。
これは同じ周波数を再生するために必要な容積が38cmの方が小さくて済むためで、パネル・
トラックの運用コストが問題になる一般のPA会社では、できるだけコンパクトなシステムを
採用する方が賢明と言えます。
38cmのサブ・ウーファー・システムの最大のメリットは、1人でも持ち運びができるということで、
会場に合わせて使用する台数を変えていけば、搬入コストをカットすることも可能です。



多くの方々は、フロントの出力をチャンネル・ディバイダーなどで80Hz付近でフルレンジ・
システムとサブ・ウーファーに分けているようですが、この方法にはいくつかの問題点があり
ます。

フルレンジ・システムはステージに近い場所から遠い場所までできるだけ均一な音圧を
供給する必要がありますので、必然的に高い位置に設置する必要があります。
一方、サブ・ウーファーは基本的に地面・床にできるだけ近い所に置いた方が能率が
上がるため、ステージの下や左右のスピーカーの下に置く方が有利です。
この結果、両者の距離が離れる傾向があり、80Hz付近の周波数帯域の音を再生した場合、
時差が生じてしまい、サブ・ウーファーの音の方が先に聞こえてしまうことになってしまうため
スピード感のないサウンドになることが多いようです。サブ・ウーファーにディレーをかける
のも有効ですが、位相のつながりまでを考慮しますと、80Hz付近ではまだ指向性が無視
できるほど低くないため、違和感がでてくる可能性があります。

20年以上前、USAのあるロックグループが、ボーカルや楽器などにそれぞれ専用のPA
スピーカーシステムをステージの背後にフライングし、当時としては画期的なクリーンで
パワーフルなサウンドが得られたようです。
現在、この方式が採用されていないのは、個々のピークが重なることがほとんど無く、全ての
メンバーが出す最大音量に対して、必要となるスピーカーシステムとパワーアンプが多すぎ
たということにつきるようです。

しかし、このシステムにも合理的な点がありました。

それぞれのスピーカーシステムを音源に合わせて周波数帯域などを最適化する事ができる
ためで、不必要な周波数帯域をカバーしなくても済むというのは、システムを組む上でも
非常に有利です。
また、低音はステレオで左右別々の音を出すと位相の打ち消し合いがおきて、音圧が
下がってしまうこともありますので、モノラルで一カ所から音を出した方が能率が高くなり、
パワー感も得られていたはずです。

もっとも、最近はベースアンプにもツィーターが使われるようになり、高音域が出なくても良い
と思われる音源はほとんど存在しないため、超低音の有無によってサブ・ウーファーが必要
となる音源の信号だけをサブ・ウーファーを使用するのが効率の良い使い方と言えます。

以上のことをふまえ、最も効率の良いのはどのようなシステムなのかを考察してみますと、
低音が70〜100Hzから適度にロールオフしたフルレンジのスピーカー・システムをフライング
したり、足場にスタッキングして、ローカットせずに使い、サブ・ウーファーは地面・床に置いて
超低音が必要な音源の信号だけをグループアウトなどのバスを利用してモノラルでミックスし、
その信号をハイカットしてから入力するというシステムが合理的だといえます。

このシステムでも、フルレンジのシステムとサブ・ウーファーからの時間差はありますが、
人間の耳が低音を感知するスピードは高音に比べて遅いため、それほど違和感がないのが
一般的ですので、問題は少ないようです。
もし、違和感を感じるようであれば、サブ・ウーファーにディレーをかかれば良いと思います。
また、超低音の音圧感は小音量ではあまり得られませんので、ある程度の音圧までブースト
したほうが、効果的です。更に、超低音の場合、ある一定の音圧以上になると、音圧感と
しては飽和してしまいますので、コンプレッサー・リミッターで適度な音圧を保つようにした
方が効率が良くなります。

これは別に特別な機器が必要になる使い方ではありませんので、一度お試し下さい。
一般的に低音を増強する楽器の信号を一つのグループにまとめ、そのグループからダイレクト
に出力させた信号をハイカットし、サブ・ウーファーに入力するだけで良いわけです。
もちろん、そのグループのフルレンジの信号はミックス出力にも回りますので、音像は他の
音源と一致し、そこにパワーフルな超低音が上乗せされ、充分な音圧が得られます。