エンジニア の 独り言

ハンダ付けについて

キャノン・プラグなどのコネクターにケーブルをハンダ付けするのは一般の
方々でも、ごく普通にされていると思いますが、意外と知られていないのが
ハンダ付けによる音の劣化です。



この画像のようなハンダ付けをされている方はいらっしゃいませんでしょうか。
導線がハンダの中に浮いている状態で、いわゆるイモハンと呼ばれる状態
です。これでも、確かに導通はあるはずでしょうが、導線とコネクターのピンの
間にハンダが入り込んでいますので、音質的には好ましくありませんし、
ハンダ付けの強度もそれほど高くありませんので、プロの間では不合格です。



こちらはごく少量のハンダが導線とコネクターのピンに薄くコーティングした
ような状態で、ハンダ付けされています。撮影の関係でハッキリは見えない
かもしれませんが、導線の縒りがハッキリ判るほど薄いハンダ付けです。
一見すると頼りなさそうに見えるかもしれませんが、イモハン状態よりは、
はるかに強固にハンダ付けされており、しかも、導線とピンが直接接触して
いますので、音質的にも優れています。
基本的に、異種金属間同士の接触では電位差が生まれるため、それを
更に複雑にするイモハンは音質的に問題になるケースがあるようです。
上手にハンダ付けするには、コネクターのピンにハンダを薄く延ばしたような
状態にした上で、導線の方にもハンダをコーティングするように付けてから、
ピンと導線を一瞬でハンダ付けするというテクニックが必要です。



ハンダ付けに自信のない方や、ハンダ付けによる音の劣化が気になる方に
お薦めなのが、このIDC対応のコネクターです。
これは2枚の刃の間に導線を押し込み、線接触でピンとコンタクトする方式
になっており、これも一見すると頼りなさそうに見えるかもしれませんが、異種
金属間同士の接触にハンダが入り込んで、音質を劣化させるおそれを無くす
究極の接続方法かもしれません。
下の画像では普通の金属ですが、実際に販売されるのは金メッキになって
おりますので、耐久性も抜群です。ただし、コネクターやケーブルは消耗品
ですので、数年単位で新品と交換されることをお薦めいたします。
詳しくは こちら をご覧下さい。





何年も使っているとシェルのコーティングが剥げやすいなど、外装部分に
華奢な面があるかもしれませんが、かえってそれが交換の目安になって
好都合かもしれません。ハンダ付けのため被覆を破かなくて済みますので
高純度無酸素銅の導線を使われている方にはメリットが大きいようです。
空気に触れた途端、99.99998%の純度が一挙に1桁も2桁も悪化するのは
常識ですので、経年変化による酸化を考えますと、被覆を付けたまま接触
させるというこの方式は理にかなっているとも言えます。
なお、この方式では直径6.4mmまでの2芯ケーブルにしか対応できませんが
音質的には2芯の方が4芯スター・クヮッドより優れていますので、音質重視
の方にお薦めです。ちなみに、4芯スター・クヮッドもSCRノイズに対しては
それほど優位性はなく、むしろインピーダンスが低い方が全てのノイズに
対して有利ですので、2芯、4芯にこだわる必要はないように思われます。
一度、ステージで比較してみてください。私の経験では、SCRノイズが問題
になるようなケースは一度もありませんでした。SCRノイズが問題になるような
現場では、まず楽器系のノイズが急増しますので、マイクケーブルだけの
ことを考えても無意味なわけです。