サウンド&レコーディング・マガジン
1988年3月号

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ジミー・ジェイムスとマイク・ウォルフは今回機材の保守点検のために来日した。
彼らは必要とあればオペレートもでき、特にマイク・ウォルフはサイモン&ガーファンクル
やエルトン・ジョンのN.Y.セントラル・パークでのコンサート等、大規模なPAミキシング
の経験があり、最近ではジミー・ペイジのコンサートのミキシングを手掛けた。

さて、図1は彼らの話をもとにしたスピーカーのセッティング図だが、メインにはS−4が
片側に58台積み上げてある。(図2)今回のコンサートではスピーカーをフライングする
ことができないため足場を使っているが、日本には円弧状にスピーカーを並べるのに
充分な奥行きの足場がないので、わざわざイギリスから運んで来たということだ。

S−4は46cmウーファー2発、25cmミッド・ウーファー4発、FRP製ホーン付き2441と
ツイーター各2発といった構成(図3)で、クロス・オーバー周波数は250Hz、1.2kHz、
6.5kHz。チャンネル・ディバイダーはクレア・ブラザーズのカスタム・メイドの3ウェイで、
このところ流行のイコライジングやダイナミック・プロセシングは採用されていないが、
位相補正やタイム・アライメントにはかなりウェートがおかれており、各ユニットのつながり
がスムーズになっている。なお、中高域と高域はネットワークで分割されている。

パワー・アンプはカーバー製で、低音域はモノラル仕様に改造されていてウーファー2発
に接続されている。中、高音域用はステレオ仕様でチャンネル毎にそれぞれS−4キャビ
ネット2台分のユニットを駆動している。つまりダブル・ラック入りのパワー・アンプ12台で
8台のS−4を駆動するわけだ。(図4)

クレア・ブラザーズでは一般に市販されている製品をそのまま使用することはほとんどなく、
おのおののスピーカー・ユニットはJBL製だが、パワー・アンプの出力に合わせてインピー
ダンスを変えるなど双方のクリッピング・ポイントが一致するように設定されている。ホーンは
FRP製でラジアル・ホーンと定指向性ホーンの中間の特性になっているし、ドライバーも
2441だがボイスコイルはインピーダンスが24オームの物に変えられている。またダイアフラム
にも特殊な黒いコーティングが施されているようだ。このS−4は現在Version2で、以前の
S−4は売却されたり破棄された。

S−4自体でもかなり低音が出ているのだが、更に超低音域を補うためにインターソニックス
のサーボ・ドライブ・サブ・ウーファーがSDL−5が16台ステージ前に配置されている。
これはマイケルがステージを揺さぶるような超低音を要求したためで、最初はS−4と同じ
サイズのキャビネットに46cmウーファーが2発入っているサブ・ウーファーが16台、80Hz
以下で使用された。しかし非常に過酷な使用のためパワーアンプもスピーカーも途中でNG。