自分達でスピーカー・ユニットを製造せず、メーカーからOEM供給してもらって いる会社の製品に多いのが、25cmや30cmのウーファーをショートホーンに 装着して中音域のレスポンスを向上させたとうたっているシステムです。 これもHarry F. Olsenの著書[Acoustical Engineering]に書かれている とおり、たとえ小口径であってもウーファーはウーファーであり、そのダイレクト ラジエーターであるウーファーの前にある物はフェイズプラグであろうが、ホーン であろうが、全て障害物でしかなく、周波数特性の変化、及び、それに伴う 位相歪みの増加は免れないのですから、ダイレクトラジエーターはダイレクト ラジエーターらしく使うのが最善の方法といえます。 中音域のホーンは極端に大きくはなりませんので非現実的ではありませんが、 ドライバーには、かつてEMILARが製造していた EC600 のように本格的な設計 の物が要求されます。 以前会った某国のエンジニアが、コーン紙に合ったフェイズプラグ状の物を 装着すれば、ドライバーになると言ったのを聞いたことがありますが、彼は紙製 の振動板の強度や音速を計算に入れていなかったようです。振動板が分割振動 してしまうと、フェイズプラグのスリットに位相のずれた圧力がかかり、周波数特性 に凹みが生じてしまいます。 直接空気を動かして音を出すように設計されたウーファーに、より大きな圧力を かけて使うのは、乱暴な気もしますし、測定によるデータの裏付けも無く、ただ 耳で判断したと言われてしまうと、恐ろしいとしか、言い様がありませんでした。 最近は、さすがに見かけませんが、下の図のように、ウーファーの口径に合わせた 筒状の物にウーファーを装着し、その筒の中にイコライザー(フェイズプラグ)と 称したタケノコ状の物を挿入したトンでもないシステムも過去には存在しました。 |
これは日本でも特許をとったようですが、特許=製品の優越性という方程式が成立 しないという良い例ではないでしょうか。この出来損ないホーンの設計をした輩は コーン紙に負荷をかけるということしか考えていなかったようで、ホーンの設計にとって 開口部における反射を防ぐことが重要であるにもかかわらず、全く対策を取っていない ため、洞窟の奥から聞こえて来るような個性的サウンドだったのが印象に残っています。 ご丁寧なことに、この特許をとった某国の会社はこの特許を元に、この手のホーンを 製作している会社だけではなく、ウーファーの前にごく一般的なフレアーの真っ当な ミッド・ホーンを製作している会社からも、特許料を取ろうとしたようですが、警告を 受けた会社のほとんどが、ミッド・ホーンの製作を止め、より良い音のするダイレクト・ ラジエーター型にシステムを変更してしまいました。 その結果、ウーファーの前に取り付けるホーンの欠点が一般の人達にも露呈してしまう きっかけを作ってしまったという皮肉な結果に終わりました。 |