エンジニア の 独り言

EMILARのホーンについて



EH800

この糸巻き型の開口部を持ったホーンに見覚えはありませんか?
MEYERの2ウェイ・システムに使われていたホーンと似ていると思われたかもしれま
せんが、実は、これは1970年代にEMILARの先進性をプロ・オーディオの世界に
知らしめた記念すべきホーン EH800 です。
このホーンは下の画像のようなラジアル・ホーンをバッフルに取り付けた場合、
バッフルから突き出てしまうホーンのフレアーをカットした形状になっています。


EH500

この画像のラジアル・ホーンEH500 はごく一般的な形状をしており、ALTEC511B
同じように、バッフルにも取り付けられるように設計されていますが、このホーンを実際に
バッフルに取り付けますとホーンの先端がバッフルから突き出てしまい、近くにウーファーが
マウントされている場合は、この部分で反射が起こり、位相を乱す原因となってしまいます。
ALTECのオーディオ・マニア用のモデルではホーンを完全にキャビネットの中に入れて
しまい、先端がバッフルの位置になるまで後退させている物もありましたが、そうしますと
今度はホーンからの音がキャビネットの影響を受けてしまい、こもった音になってしまい
好ましくありません。ちなみにALTEC独特の開口部に縦に取り付けられた板状の物は
マルチ・セルラー・ホーンの名残のようで、ホーンの共振を少なくするのには多少役立ち
ますが、理論的には障害物ですので、好ましくありません。
しかし、EH800ではバッフルに取り付けてもひさしのように出っ張る部分がありませんので
ウーファーの近くに取り付けても、ウーファーに覆い被さるような状態にはならず、非常に
優れた特性が得られます。このホーンのように、バッフルから飛び出ない形式のホーンは
フラット・マウント・タイプと呼ばれていますが、CommunityというFRP製のホーンで有名な
会社が作ったホーンはEH800とは逆に、ホーンの先端がバッフル面にくるようにして、
サイドはバッフル面までそのまま延長したような形になっていました。このホーンはUSAの
PA会社にも多く採用され、フラット・マウント・タイプの優位性を証明するのに役立ちました。


EH820

EMILAREH820EH800を更に進化させ、フラット・マウント・タイプの優位性を
フルに活かして、2インチ・スロートにした製品です。バッフルにネジ止めすることに
より、金属製のホーンにありがちなホーン鳴きが極限まで抑えられ、叩いても、まるで
岩石のようなコツコツという音しかしない理想的なホーンに仕上がっていました。
指向特性的には定指向性ホーンのカテゴリーに入りますが、あくまで完全なホーン
ロードがかけられることを優先していますので、音質的にはエクスポネンシャル・
カーブを持ったホーンそのものです。ホーンを大型にして定指向特性を良くしようと
しても、定指向性自体が完全なものではないうえに、理論的にはメガホンと同じ
コニカル・ホーンをいくつか重ねたような設計で、音質を損なってしまうのは、あまり
得策ではないように思われます。


EH520



EH810



EH1210