コンサートのPAをされている方でも、会場の特性を含めたシステム全体の 周波数特性を把握されていないというのが一般的のようです。 今回、大分県豊後大野市にあるエイトピアおおのの大ホールをお借りして 色々測定して参りましたので、そのデータを基に説明していきたいと思います。 |
このデータはRADIANのKR-5215Cを舞台の下手(客席から見て左側)に 2台置いて測定した物ですが、50Hzから500Hzにかけては舞台両袖にある 花道の影響からか、多少乱れていますが、500Hz以上は非常にフラットで 最良のスタジオモニタークラスの周波数特性が得られています。1mの位置 (赤線)と3mの位置(緑線)は下の方のスピーカーシステムだけを鳴らした 特性ですが、5mの位置の赤線は下、緑線は上のスピーカーシステムを 鳴らした時の特性です。 (2台のスピーカーはサブウーファーの上に積み上げてあります。) |
こちらは舞台の上手(客席から見て右側)のデータですが、2mの位置 (緑線)は軸上から外れていたのか、10kHz以上のロールオフが見られ ますが、それでも素晴らしい周波数特性だと言えます。 この結果から言えることは、舞台付近の音の反射率は500Hz以上の 周波数ではかなり均一になっているということで、ライブ録音に最適と いうことです。5mの位置で上のスピーカーシステム(緑線)の特性は 壁の反射からか、ピークとディップが発生していますが、それでもかなり 素直ですので、トータルのサウンドに悪影響をもたらすことはないように 思われます。 |
そして、この周波数特性は約30mほど離れたミキサーの直前の座席の位置で 測定した物ですが、高音域がなだらかに落ちており、このホールの残響がかなり 優れていることを証明しています。 デジタル・リバーブでホール系の残響を調整するパラメーターのひとつに、個々 の反射音にかけるハイカットフィルターがありますが、音が良いとされるホールでは 高音域にかけて、残響時間が徐々に短くなるというのが一般的ですので、この 特性はデジタル・リバーブに求められている理想的なホールのパラメーターに 近いものだとも言えます。 この周波数特性をご覧になって、ハイ落ちに聞こえるのではないのかと思われた 方もいらっしゃるようですが、人間の耳には最初に届いた音を一番強く認識する という性質がありますので、実際にはスピーカーからの直接音の周波数特性の方 がメインになり、間接音が支配的な音場でもかなりハッキリと高音域を聞き取ること ができます。もちろん、空気の粘り気によって、高音域ほど減衰するという物理的な 性質はありますが、それが問題になるのは野外などで数百メートル離れた場合に 限られるようです。 この特性がいかに優れているか、JBLのシステムとの比較で説明することにします。 |