エンジニア の 独り言

ドライバーの構造について



上の図はJBL375に代表されるアルニコ磁石を使った内磁型のドライバーの構造
ですが、アルニコ磁石の特性上、薄くすることができないため、ダイアフラムから
スロートまでの距離が長くなってしまい、この部分だけでショートホーンのような働き
をしています。
このことは、高音域でホーンの設計より実際の指向性が狭まってしまうというデメリット
を生じさせます。


この図は内磁型のドライバーのフェイズプラグやスロートまでの構造をそのまま
利用し、フェライト磁石を使った外磁型に変更したドライバーの構造です。
アルニコ磁石より磁力の弱いフェライト磁石で同じだけの磁束密度を得ようと
するために、かなり大型の磁石を採用せざるを得ないために、より大きく、より
重くなってしまっています。しかも磁気回路以外の重量がかなりあり、サイズや
重さの割には、磁気回路は強力とは言い難く、また磁気回路自体も鉄の占め
る割合が高いため、効率はあまり良くないようで、物量だけが目立つ設計に
なってしまっています。


これに対しEMILAR/RADIANのドライバーは初めからフェライト磁石の特性
を活かすように設計されており、非常にコンパクトで軽量化されているにもかか
わらず、大型ドライバーとしてのサウンドが確保できています。

軽量化には、磁気回路以外の重量を減らすと言う方法が一般的で効果があり
ますが、RADIANでは更に進化させ、磁気回路を構成する素材のうち、それ
自体には磁力を増やす働きのない鉄の量を可能な限り少なくするという手法を
とっています。この結果、余分な鉄を減らせる分、フェライト磁石の磁力を効率
良くボイスコイルの収まるギャップに集中させることが可能になり、しかも量が少
なくて済むことから、より高価な低炭素鋼を採用できるというメリットも生まれて
きました。磁力を効率よく伝えるには鉄中の炭素を極限まで減らす必要があり
ますが、一般的な製鉄では炭素の固まりであるコークスを使う関係で、どうしても
炭素が入り込んでしまう傾向がありますので、不純物の少ない鉄は高価です。

普通ですと、使用されている磁石の量が多ければ良いという見方をしてしまい
がちですが、ある程度以上の量からは磁力が飽和してしまうという現象が起きる
ため、それ以上能率や周波数特性を良くすることは望めません。
RADIANでは必要かつ充分な量の磁石を採用していますので、効率の良い
磁気回路と相まって、無駄に大きいドライバーより優れた特性を発揮しています。

また、この設計ですと、ダイアフラムからスロートまでの距離が短くなり、拡散性
も優れているため、ホーンの指向特性に悪影響を及ぼす可能性は少なくなって
います。

たまに、RADIANのバック・キャップ内部に吸音材が入っていないが、付け忘れ
ではないかというご質問がございますが、必要ないから入れてないだけです。
バック・キャビティー内部は150dB以上という高音圧になり、この部分にフェルト
のような吸音率の低い物を入れても吸音効果は期待できません。
フェルトの本当の働きはバックキャップが振動するのを若干抑える程度で、音の
ほとんどは個体伝送によってドライバー全体に伝わってしまいます。
RADIANの場合、バックキャップ自体の剛性を高め、振動が直ぐドライバー本体
→ホーン→エンクロージャーと伝わり、摩擦熱に変換されて減衰するように設計
されていますので、小手先の対処療法とは一線を画しています。