エンジニア の 独り言

チタンについて

RADIANのアルミ製ダイアフラムとJBLのオリジナルとの比較をしているうちに、
何故JBLは音質的にも特性的にも優れている素材であるアルミを敢えて捨てて、
チタンにしてしまったのだろうと不思議に思えるようになりました。
James B. Lansing はいなくても、彼の目指した卓越したサウンドを聴いて育って
きているはずの世代が、最も重要な部分を切り捨ててしまったというのは、腑に落ち
ません。

以前、こんな話をカメラ・メーカーの人達から聞いたことがあります。
大事な軍事物資であるチタンの需要が軍事関連で少なくなってしまうと、チタン産業
保護のため、カメラ・メーカーにチタン・ボディーのカメラを限定生産で造るように、某
政府機関から「天の声」がかかるそうです。
最近はゴルフのチタン・ヘッドのドライバーの需要がそこそこあるので、チタン・ボディー
のカメラが発売されるといったニュースはあまり聞きませんが、加工性が悪いため作り
たくもないチタン・ボディーのカメラを製造しなければいかないとしたら、迷惑な話だと
思われます。



このチャートはJBL2450Jに2kHz(電圧:2V)の正弦波を入力した時の高調波歪みの特性です。



こちらは同じドライバーでダイアフラムのみラジアンの1245−16に交換した場合の特性です。
2kHzでの出力が5dBアップしているにもかかわらず、4kHz/6kHzの2次/3次高調波歪みが激減していることがお分かりいただけると思います。
しかも、オーディオ・マニアの間で、特に問題とされている、超高調波歪みに関しては、全く検知できないほど低いレベルに抑えられています。
中には、実際に音圧が上がっているのにもかかわらず、高音が出ていないと感じられる方もいらっしゃるようですが、高調波歪み成分を高音と誤解されている場合がほとんどですので、一度、キャリブレーションが済み、歪みの少ない音が基準になると、もう二度と元には戻れなくなるようです。



このチャートはJBL2450Jに2kHzと2.5kHzの正弦波を入力した時の混変調歪みの特性です。



こちらは同じドライバーでダイアフラムのみラジアンの1245−16に交換した場合の特性です。
こちらも2kHz/2.5kHzにおける出力がアップしているにもかかわらず、混変調による歪みが激減していることがお分かりいただけると思います。
この混変調歪みは、楽器などから発せられる倍音成分とは、出方が異なりますので、高調波歪み以上に悪影響を及ぼします。

歪みの多いサウンドに慣れきってしまった耳を一度キャリブレーションされてみてはいかがでしょうか。

もし、JBLがUSAのチタン産業維持のためにチタンを使い始めたとしたら、最大の
被害者は戦争という暴力から最も縁遠い音楽愛好家でしょう。