JBL D130

JBLのD130はJames B. Lansingが604の設計を終え、ALTECを離れてJBLを立ち上げてから
初めて開発されたウーファーで、ALTEC時代の515のコピーだったD101とは一線を画した
4インチ(約10cm)口径の当時としては巨大な磁気回路を有し、圧倒的な能率を誇っていまし
たが、目的は515より低い周波数まで100dB/W/mを超える高能率を確保することにあった
ようです。
当時ポピュラーだった2A3シングルといった2〜3W程度しか出せないパワーアンプでも十分な
音量が出せるようにするためだったようです。
もちろん、数百Wといったハイパワーアンプが一般的な現代ではオーバースペックかもしれま
せんが、おもしろいことに、高能率のユニットの方が小さな音が出せるようです。
小口径のウーファーの方が小さな音まで立ち上がりが良いと思い込んでいるオーディオマニア
の方々が多いのですが、スピーカーに耳を近づけて聞こえるか聞こえないかレベルの小音量
までボリュームを絞っていった場合、38cmのシステムの方が、20cm未満のウーファーで低音
まで再生できるようにしたシステムより、小さな音が聞こえます。
つまり、あまり音量を上げられない、小さな部屋で繊細な音まで聞きたいという場合も、38cmの
システムを導入するメリットがあるということで、更に、大きな振動板を使ったヘッドフォーンの
方が、小さなヘッドフォーンより、ヘッドフォーン自体を耳に押しつけなくても、低音がよく聞こ
えるということと同じように、放射面積の大きなウーファーの方が、小さいウーファーより低音域
がよく聞こえます。
皮肉な話ですが、数十畳の部屋で、ある程度の音量で鳴らせるなら、小口径のシステムでも
そこそこの低音感や迫力が得られますが、6〜8畳程度の小さな部屋では、38cmクラスの
システムの方が小音量でも迫力のあるサウンドが味わえるということになります。
もちろん、38cmのシステムは大音量で鳴らしても素晴らしいわけで、どちらかというとオール
マイティーという感じがします。
10cm〜16cmクラスのシステムの場合、まともに聞こえるのは数十cm程度しか離れられないと
いった条件になると思われます。

D130はそういった意味で、一般家庭向きかもしれません。
残念なことにアルニコ磁石の減磁により本来の特性が得られないユニットが多いのですが、
Jamesの設計の片鱗は味わえるようです。
チューニングを変更することで、特性が異なるペアーでも、ある程度まで特性を揃えることは
可能です。


このユニットの場合、下のユニットを上のユニットに合わせ、バランスをとってみました。