オーディオ・マニアの方々には、実測データの裏付けのないオーディオ雑誌の評論 やカタログ・データを信用して、スーパー・ツィーターを使っている方が多いようです。 そして、それで満足されているかというと、そうでもなく、高音がシャリシャリするとか キンキンして聴きづらいと感じている方もいらっしゃるようです。しかし、そういう方は まだ良い方で、明らかに歪みと思われる音を超高音が出ていると勘違いされている 場合も多いようです。 |
このデータは、あるオーディオ・マニアの方のお宅へお邪魔して測定したJBLのスタジオ モニター4430の周波数特性ですが、部屋においてある家具や壁の影響もあり、100Hzや 300Hz付近に定在波や共振による5dB程度のディップは認められますが、36Hz〜17kHz が10dB以内に収まっており、かなり優秀な特性と言えます。 緑の線は、2本のダクトのうち1本にタオルを詰めた状態の特性ですが、バスレフの動作が 不完全で、とりあえず低音域はダラ落ちになり、低音のボンつきは抑えられるかもしれませ んが、レスポンスとしては好ましくない特性です。昔のイギリスのスピーカーでバスレフの 開口部にネットを張り、そこに吸音材のような物をはさんで抵抗を掛けてバスレフのチュー ニングをするシステムがありましたが、特性的にはバスレフの出来損ないとしかいいようの ない代物でしたので、バスレフのポートに詰め物をするのは得策ではありません。 低音の出方が気に入らない場合は、更に制動力の高いパワーアンプを選ぶか、バスレフ のチューニングを変更すべきだと言えます。 |
上の周波数特性は、4430に採用されているドライバー2421のダイアフラムをRADIANの 1225に交換し、スーパー・ツィーターを0.5μFのコンデンサーを直列に入れ、逆相接続 した場合の物です。このお宅に伺った段階では、1.5μFのコンデンサーが使われており そのままではうるさいのでアッテネーターを入れて調節していたとのことです。 どんなツィーターでも、超高音域はレスポンスが低下しますのでアッテネーターではなく、 より小容量のコンデンサーに変更する方が良い結果が得られる事は確実です。 この特性を見ていただければお判りだと思いますが、スーパーツィーターを使っても、それ ほど超高音域は改善されず、むしろ歪みが大きくなってしまっている状態でした。 JBLが4344などのスーパー・ツィーターを使ったそれまでのシステムから脱却し、スタジオ モニターとして望ましい特性の得られる2ウェイに路線変更したモデルですので、わざわざ ツィーターをつける必要はないどころか、邪魔になっていることは17〜20kHz付近の特性 からも見て取れます。実際に20kHz付近の正弦波を入力したところ、10kHz以下のざわつ いたようなノイズが耳に付きました。0.33μF程度のコンデンサーなら改善される可能性は 残っていますが、劇的に超高音域をのばせるような特性ではありませんので、メリットは 少ないように思われました。 |
この周波数特性はダイアフラムのみをRADIANの1225に交換し、改めて測定しながら アッテネーターの位置を調整し、左右のスピーカーを同時に鳴らした場合の周波数特性 ですが、ステレオで鳴らした場合、低音域が盛り上がり、かなり迫力のある低音が得られる ようになります。部屋の影響もあまりなく、かなりスムーズなサウンドに変身しました。 ネットワークを設計し直せば更に高音域をのばすことは可能ですが、これはこれで満足 すべき特性だと言えます。 RADIANのダイアフラムに替えて一番変わった点はクロスオーバー付近の音の厚みで、 サックス奏者の息づかいなどがリアルで、芯のあるサウンドが得られるようになり、満足して いただけたようです。 このシステムの場合、バスレフのチューニングは4333とも4344とも異なり、非常にまともな 設計になっていますので、低音の吸音がしっかりしていない部屋では低音が盛り上がりすぎ ボンついた低音になりがちだと思われますので、スタジオ・クラスまではいかなくても、吸音 に気をつかっていただく必要があるようです。 |