アルニコ磁石が減磁しており、周波数特性がカマボコ状になっている ユニットをよく見かけますが、そのようなユニットでも、James B. Lansingの 基本設計の素晴らしさを堪能することは可能なようです。 |
このデータは、あるオーディオ・マニアの方からお預かりした2440で、ホーンは バイ・ラジアル型の2380Aに取り付けて測定したものです。 ダイアフラムはチタンの物と交換してあり、昔のサウンドとは異質な感じがするのは 否めません。 |
JBLのチタン・ダイアフラムで気になるのがダイアフラム中央のボタンのような物です。 フェイズプラグ側に汚れが付着し、廃棄処分にする事になっているので、ついでに、 このボタンを剥がして、同じ条件で測定してみました。 よく見ないと違いが判らないかもしれませんが、ボタン付の場合、6kHz/13kHz/18kHz 付近にピークが発生しているようです。フェイズプラグで派手なイコライジングをして いない2440ではあまり関係ないのですが、2445や2450ではこのピークにより、高音 が出ているような印象になるのかもしれません。 しかし、あくまでエッジの反射を利用して作り出したピークですので、以前のアルミの サウンドに慣れた方には、耳障りに聞こえたとしても不思議ではありません。 2440ではこのボタンが無い方が高音域がなだらかに落ちるので、無しの方が良い のではないかと思われます。 なお、700Hz付近のレスポンスが多少落ち込んでいますが、ボロボロになったスポンジ を取り去ったせいかもしれません。音質的には、あまり変化はないようです。 |
普段ですと、ダイアフラムに直接触れるようなことはしないのですが、今回 は特別ですので、ペンシル型消しゴムで軽く圧してみたところ、金属とは 思えないほど柔らかいのには驚かされました。しかも、これだけ凹ませても、 ストレスがかかって、圧した痕が残るような様子は全くありませんでした。 アルミでこのようなことをしますと、圧した跡が残り、金属疲労の原因となり ますし、ベリリウムでは割れてしまいますので、チタンのダイアフラムの場合 フェイズプラグにボコボコぶつかるような状況でも、案外、平気なのかもしれ ません。硬度で言えば、焼き入れしたアルミの方が硬いようですので、 アルミの方が高音域がのびるだろうという感じです。 ちょっと意外だったのは、フェイズプラグとのクリアランス(隙間)が 結構あるということで、フェイズプラグとの間隔が少ないほど、高音域がのび 全体的な能率も向上しますので、そういった特性よりは耐久性を重視した 設計だとも言えます。 |
今回、ダイアフラムをRADIANの1245へ交換する際、最も問題になった のが、ネジの頭がつぶれていたことでした。ダイアフラムを固定するネジには 真鍮が使われており、ねじ回しに当たる部分が欠けやすいのですが、ここで 確実にとめられなければ、振動でビリ付きが出てくるのは必至ですので、上の 画像の左のネジのように、ヤスリで−型のねじ回しが使えるように、溝を刻む ようにしてでも、しっかり回せるようにする必要があります。 |
バックキャップ内のスポンジも劣化でボロボロになっている場合が多いようです が、そのままにしておくと、粘り気を持ったスポンジ片がダイアフラムにこびり 付いて、音質が悪化する可能性が高いようです。 JBLの場合、薄いフェルトにスポンジをかぶせた状態になっていますが、 ALTECでは粗毛フェルトだけですので、少し厚めのフェルトに貼り替えるだけ で大丈夫でしょう。 |
さて、RADIANのダイアフラムのうたい文句である高音域の伸びですが、1kHz から5kHzまでの平均値との比較ではJBLが10kHzで15dB落ち、15kHzで25dB 落ちなのにもかかわらず、RADIANではそれぞれ、10dB落ち、12dB落ちと 非常に改善されています。更に注目すべき点は、500Hzから1kHzが平坦に なったことで、密度感のあるサウンドが得られるようになったことです。 使用しているホーンが定指向性型のため、高音域はパワー・レスポンスどおりに ロールオフしていますが、この種のホーンの場合、ホーン用のイコライジングを して使うのが常識ですので、このようになだらかに落ちている特性は扱いやすさ の点でも歓迎すべきことでしょう。 ちなみに13kHz付近のピークはフェイズプラグ(イコライザー)のピーキングに よるもので、ダイアフラムのせいではありません。 また、音圧の絶対値はインピーダンスの差などもありますので、無視していただ いた方が良いと思います。更に、200〜300Hz以下はドライバー保護のため、 絞って測定していますので、無視してください。 ドライバーの場合は最低共振周波数より低い周波数の再生も可能ですので、 最低共振周波数だけを取り上げて云々というのはあまり意味がありませんが、 このデータからは、RADIANのマイラーエッジの方が金属エッジより、滑らかな 動作をしていることが見て取れます。 通常ですと、この段階で、2440を復活させたということで、メデタシメデタシと いうことになるわけですが、せっかくここまで苦労したのに、どんなユニットにも 使える=どんなユニットにも最適ではない市販のネットワークやチャンネル・ ディバイダーと組み合わされてしまっては、この類い希な名器が現代に甦った 価値が無くなってしまいますので、このユニット専用のネットワークを特別に設計/ 製造することにいたしました。 |